何を作ればいいか思いつかないし、だんだんめんどくさくなってきてタカトはそのまま何日かすごした。
キクちゃんとも、いつもとかわりなくしゃべったりした。

「引越しまで、あと1週間やね」
お母さんが言うのを聞いて、タカトはちょっとあせった。やっぱり切り絵にしよか。そんなふうに思うようになった。

学校から帰ると、机に向かい、じーっと考えた。まず、何色の画用紙にしよかな。たしか、キクちゃんは緑が好きやったな。タカトは緑の画用紙とはさみを机の上に置き、また考えた。
何にしよ?そや、犬にしよ。キクちゃん犬好きやった。
タカトははさみをもつと、いきおいよく画用紙を切り始めた。たしかお父さんがこんなふうに切っていた。頭に思い浮かべた犬のようになるはず。
なんやこれ?
出来上がった切り絵を見て、タカトはがっくりきた。
なんか、へんや、へんすぎる。
もう一度、挑戦することにした。緑の画用紙に、今度はゆっくりはさみを入れる。さっきより、ていねいに切っていく。
なんやこれ?
へたくそやな。
タカトはいやになってきた。

また明日やろ。


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