家に帰るとまほう使いはさっそく笛をふきました。 音は簡単に出ましたが、なんだか変な音です。 まほう使いは練習するのが面倒くさいので、 まほうを使うことにしました。 「世界一美しい音色を出してやる。」 ところがまほうを使っても音は変わりません。 しかたないのでちょっと練習することにしました。 「なんでおれが笛の練習なんかしなきゃならんのだ。」 まほう使いはみけんにしわをよせながら練習しましたが ちっともいい音がでません。 ペットのはりねずみも今日はだまっています。 そのうちだんだん腹がたってきました。 「おれ様がまほうを使わずに練習してやっているのに、 なんという笛だ!」 まほう使いはそう言って笛を床にたたきつけました。 笛は折れてしまいました。 はりねずみは部屋のすみでおびえています。 「このいかりをどうしずめればいい?なあ、はりねずみ。」 はりねずみはとびあがっておどろきました。 「そ、そ、そうですね。 なんかおもいっきり悪いことをしたらどうです? そうすればすっとするかもしれませんよ。」 はりねずみは部屋のすみからそう言いました。 「悪いこと?いつもやってるじゃないか。」 「もっともっと悪いことですよ。」 「例えば?」 「例えば・・・ずっと何日も雨を降らすというのはどうです?」 まほう使いはしばらく考えました。 「ふん。それはおもしろいかもしれんな。 ずっと雨が降れば町のやつは困るだろう。 せんたく物はかわかない、じめじめしてカビが生える、 みぞから水があふれ、そのうちに洪水になる。 よしはりねずみ、お前の案をさいようしよう。」 はりねずみはほっとしてため息をつきました。 |