「気づいているよ。じゃあまずそのことについてからしつ問する よ。どうして君はその・・・白黒なの?」 「私のいるところは色がないの。前はあったんだけど、 いっしょに住んでいた友だちが出て行ってから毎日泣いていたら だんだん色がなくなってきて、ついに白黒になってしまったの。 その後あなたが引っこしてきて毎日ピアノをきかせてくれたわ。 それが私にとってどれだけすくいになったかわかる?」 ぼくは女の子がとてもかわいそうに思えた。 「何かぼくにできることがあるかな」 「あなたがいやじゃなければ私のところにきてピアノをひいて くれない?」 「そんなことならかんたんさ」 女の子がはじめてえがおを見せた。すごくうれしそうだ。 その時ぼくは女の子のほっぺがわずかにピンクがかったことに 気づいた。 ぼくがそのことを言おうとした時、げんかんのかぎがさしこまれ る音がした。 かがみはしずかにしまり、女の子のすがたは見えなくなって しまった。 |